主な症状別の対処法

救急要請

泣き止まないとき

多くの赤ちゃんにとって人生は産声から始まります。「泣く」という行為は赤ちゃんにとって「笑う」よりも先に身に着けている最も原始的な表現方法です。
親子にとってコミュニケーションの原点になる行為であり、「どうして泣いているのか?」と最も解釈や対応に困る行為でもあります。
さらに、放っておくのが難しく、最も感情に訴えてくる表現とも言えます。
ちゃんと泣けていれば、その時点では全身状態良好のサインです。
一方で、隠れた痛みや不快感の表れの場合には、今後悪化していくサインの可能性もありますので、経過と本人の様子をしっかり見てあげる必要があります。

【ホームケアの要点】

〇落ち着いてお子さんの気分を変えてみましょう
  • ミルクや好きなものをあげる
  • 音楽や好きな音を聞かせる
  • 抱っこしながら移動をする
  • 余裕があれば、車のチャイルドシートに乗せて短時間のドライブに行く
  • あやす人を変える
〇ご自分の気持ちが落ち着かないときやイライラするとき

そのイライラは誰もが経験することです。決して自分を責める必要はありません。
赤ちゃんの泣き声は、親にとっては「自分への抗議」に感じることもあり、なかなか泣き止まないと「無力感」を感じてとてもつらい気持ちになります。
かわいくないと感じるのも自然なことです。
「決してあなたが悪いわけではありません」
一度、お子さんから離れましょう。親にとっても気分転換は重要です。
可能であれば、ほかの方に短時間でも変わってもらいましょう。

【観察ポイントと受診のタイミング】

激しく泣いたと思ったら、すぐに寝る、ぼーっとする、少しの刺激でまた激しく泣くというサイクルを短時間で数分以内に繰り返す場合には「易刺激性が高い」という状態で出血や感染などで脳にダメージがある可能性があります。
また、泣いたときに顔色が悪くなるときは、窒息などの呼吸の問題や心臓の問題がある可能性があります。
いずれの場合も救急要請をおすすめします。

手足やからだを観察して腫れているところがないか確認しましょう。
オムツを替えようとすると痛がるなど特定の部位を触ると痛がるときはその部分の関節炎や骨折なども考慮されます。救急外来に受診相談をしましょう。
また、長時間泣き続けて、哺乳や水分摂取が全くできない状態の時には、おなかの中に異常が起きている可能性や全身状態が徐々に悪くなっている可能性も考えられます。その場合も救急外来に相談しましょう。

上記のような異常が見られない場合でも1時間以上、あやしたり環境を変えても泣き止まないときには救急外来に受診相談をしましょう。
来院する準備をしているときや病院に向かう車内で泣き止んで眠れた時は病院に連絡して受診を中止しても構いません。

パープルクライング

赤ちゃんは「泣くのが仕事」と良く言われます。しかし親にとっては大きな悩みの種でもあります。成長と共に泣く理由はさらに複雑になっていきますし、最後まで理由が分からないこともしばしばあります。
泣き止まないわが子を抱えて途方に暮れた経験がある親御さんも多いのではないでしょうか。小児科医である自分もそんな無力な夜を過ごした経験が何度もあります。
「健康には問題がなさそうだけれど、泣き止まない」
そんな経験は世界中の親にとっても同じなようで、「パープルクライング(PURPLE Crying)」という言葉があります。
これは成長と共にみられるようになる「健康には問題ない泣き」の特徴をそれぞれの頭文字をとってPURPLEと表したものです。

(P)Peak of Crying

生後2週間ごろより現れ2か月ごろピークを迎え、徐々に和らいでいきます。

(U)Unexpected

泣いている理由を予想できません。

(R)Resists soothing

なだめることもできません。

(P)Pain-like face

たとえ痛くなくても痛そうな表情で泣きます。

(L)Long lasting

長く続くといわれトータルで何時間も泣くこともあります。

(E)Evening

とくに午後から夕方にかけてよく泣くといわれています。

 

大切なのはこのような泣きは「成長過程」であり、育て方が悪いわけではなく誰にでも起こることだということです。